New6速ミッション~エンジニア視点からの解説

サンクチュアリーIMCの鈴木です。どうもみなさんこんにちは。

急激に寒くなりまして秋使用を飛び越えて冬仕様の寝間着で就寝している鈴木です。敷き毛布だけ夏使用でちょっぴりひんやりしておりますが気にせず眠りについております。

空冷エンジンにはやさしい季節となってきましたが、我々サンクチュアリー本店レーシングにとっても気候的には有利な季節となってきました。テイストオブツクバまで日もなくなってきましたので連日バタバタと準備を進めています。

サンクチュアリー本店中村代表ブログをご覧の方はご存じだと思いますが、以前からZレーサー3号機でテストを行っている’New6速ミッション’について、サンクチュアリー本店レーシング現場サイド私鈴木の目線から少し触れてみたいと思います。

私鈴木自身も設計開発に携わっているNew6速ミッションなんですが、このミッションはロードレースの過酷な環境の中で「戦える」ことを目的として開発してきました。

ロードレースにおいてストリートの10倍の負荷がかかると言われていますが、テスト走行時1分フラットペースでの周回ではなにも問題が起きなくても、世界選手権出場経験のある国際ライダー國川の58秒アタックタイムで走行した際のマシンへの負荷は、全く別世界の消耗を受けているのを事実何度も目の当たりにしてきました。

これから目指しているタイムはさらにその上・・・この先は誰も踏み入れたことのない領域です。したがって材質や強度、精度の高いミッションが必要不可欠な要素となり開発が始まりました。

そうなるとまずはギヤやシャフトの強度が必要となります。材質はSNCM420という浸炭材と呼ばれる非常に引張強さの高い材料を採用しており、さらに熱処理の浸炭層の深さは0.3mm~0.6mmが一般的であるところ、共同開発者である試作品メーカーの意向により1.0mm~1.2mmの深さまで熱処理を行っております。表面強度は高く、中は靭性を持たせた剛性を持つ性質となっており過酷な環境の中でも耐えうる剛性を持たせています。

ストリート車においても純正部品がメーカー廃盤となっている今現在では程度のいい中古を探すこと自体が困難な状況であり、リプレイス部品としても非常にメリットが高いのでないかと思います。

そしてもう一つロードレースで戦うことを目的として必要不可欠な要素となったのが、ギヤ比です。

ラップタイムを詰める上でギヤチェンジの回数を減らすことがタイムアップにつながります。なるべくギヤチェンジを少なくして走りたいところなんですが、どこのコーナーに合わせるか、どこのコーナーの侵入時のエンジンブレーキの強さにあわせるか、加速と減速のセッティングが非常に重要となります。

一般的にはエンジンの出力特性やタイヤ外径、タイヤのラウンド形状やタイヤサイドの外周によってファイナルギヤ比で合わせたり、アンチスクワットを利かせてエンブレを和らげたりとセッティングしていくんですが、つくばサーキットコース上でどうしてもエンジン回転を10000rpm以上回さなければならない箇所が二つ。1ヘア~ダンロップコーナー~アジアコーナーとバックストレッチ、2速と5速です。

Zレーサー3号機に搭載しているエンジンは空冷2バルブエンジンで最新のスーパースポーツのようにエンジン回転を上げてパワーを出すようなエンジンではありません。ピークパワーがおおよそ10000rpm前後となり、それ以上のエンジン回転はエンジンを損傷させるリスクを高めてしまいます。したがって同じ車速であれば(立ち上がりの鈍さが出なければ)エンジン回転を下げたいところなんです。

ファイナルギヤ比をロングに変更テストをすると、トルク12.8㎏fのエンジンであってもたちまち立ち上がりが鈍くなってしまいます。なんとその差0.055レシオ・・・そのわずかなギヤ比の違いが大きな影響を与えます。

そこでミッションのギヤ比を変更する結論に至ったのですが、変更するにしても全てのギヤをリアスプロケットの丁数変更と同じでは意味がありませんので、2速は2速、5速は5速と切り分けて想定し、選定していきます。

しかし、ギヤの強度に関わるモジュールや転位、バックラッシなどたくさんの制約の中で選定するのは大変な作業で、微妙な数値を変えては車速を割り出し、そして強度を損なうことのないように、特に2速ギヤは非常に高いトルクのかかるギヤですのでギヤ自体の強度を落とさずベストなギヤ比を何度もトライ・・・。

その結果、2速ギヤは2.000からテストし1.950、さらに1.944、1.941へと小刻みにテスト。5速ギヤは1.240からテストし1.200へとテスト。

理論上導き出した数値を元に一つ一つ探っていきます。計算上10000rpmでの車速比較で2速ギヤ+3.7㎞、5速ギヤ+6.3㎞となるギヤ比を選定、同じ車速の場合ではエンジン回転を300~400rpm下げられるギヤを選定し、走行テストを開始しました。

その結果、トルク負荷の高い2速ギヤは比較的ロングに設定してもコーナー立ち上がりの鈍さも感じられず、5速ギヤは実際のデータロガーにおいても最高回転数を300~400rpm程度抑えることができ、最もパワーの乗る回転域でマージンを持たせるギヤに辿り着きました。ギヤチェンジの負担を軽くすることはライダーにとってもかなりのアドバンテージになります。

しかしこれはレースに限ったことではなく、ストリート車両の中でもトルクの太いエンジンで低速ギヤで加速しているときにすぐにフケ切ってしまったり、せかせかシフトアップしなければならなかった経験はないでしょうか?その場合フロントのスプロケットの丁数を上げるかリアのスプロケットを小さくしたりしますが、Z系の場合寸法的な制約も出てきてしまいます。

これはSTDミッションギヤ比との同条件での比較です。

ストリートにおいても、低速域でのストップ&ゴーの多いストリート車にこそ特に有効なギヤ比となり、高速走行においても最高速度が伸びることで、より快適な高速走行のアドバンテージとなると思います。

これまでたくさんの労力を注いできたこのNew6速ミッション。企画者、設計者、製作者、これまでたくさんの意見を交わしてきました。それぞれのエンジニアの想いがもうすぐ形になります。

すでにお待たせしている方もいらっしゃるかと思いますが、New6速ミッションもうすぐリリースになります。

 

そして・・・

話は変わりますが、先日デザイナーのMさんからお祝いのノベルティーを作って頂きました。

販売予定はないんですが、せっかくですので作業をご依頼された方に先着でお配りしたいと思います。カスタムや修理のご相談何でも構いませんので、ホームページのコンタクトのページからお問い合わせいただけたら作業内容などお答えさせていただきますのでお気軽にご相談下さい。数に限りがございますのでお早めにご連絡いただけたらと思います!

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